※この連載では、全三回にわたってパーソナルトレーニングジムにおけるランディングページの作り方について解説しています。
第一回の記事では、ランディングページの制作を以下の3ステップで行っていくことを紹介し、ステップ1について詳細に解説しました。
ランディングページ制作のステップ
- パーソナルトレーニングジムを取り巻く競争環境の状況を明らかにする(第一回)
- 業界の競争状況をふまえてマーケティング戦略を設計する
- マーケティング戦略をランディングページに落とし込む
第二回の本記事では、手順2「業界の競争状況をふまえてマーケティング戦略を設計する」ステップについて解説していきたいと思います。
※前回の記事についてはこちら >>パーソナルトレーニングジムのランディングページの作り方(第一回)
パーソナルトレーニングジムのマーケティング戦略を設計する手順
これまでの分析で、パーソナルトレーニングジム業界では個別性の高いトレーニングやサポートプログラム、通いやすさなどが競争要因として重要だということが分かりました。
ここからは、業界の競争状況をふまえたうえで、パーソナルトレーニングジムの差別化を可能にするマーケティング戦略をつくっていきます。
手順は以下の通りです。
- ターゲットカスタマーの候補を洗い出す
- 競合するパーソナルトレーニングジムを特定・分析する
- ターゲットカスタマーを決めてマーケティング戦略をつくる
この3つのステップを通して、「誰に」「何を」「どのように」伝えれば競合するジムとの差別化を図り、広告の費用対効果を高めることができるかが明確になります。
そしてランディングページに盛り込むべき内容や効果的なコンテンツの見せ方が分かるようになります。
ではさっそく始めましょう。
1. ターゲットカスタマーの候補を洗い出す
最初のステップは、ターゲットカスタマーの候補を洗い出す作業です。
ターゲットカスタマーとは、戦略的にパーソナルトレーニングジムを売り込むために設定する標的市場のこと。
マーケティング戦略の設計では、自社にとって旨味のあるカスタマーをターゲットに設定することで、マーケティング活動における費用対効果の最大化を目指します。ステップ1では、そのターゲットの候補を特定します。
具体的には、将来的にジムの顧客になる可能性が高く、ターゲット候補として有望なカスタマーの属性や特徴、ニーズなどを明らかにし、そのパーソナリティや人物像を想定します。
【事例】パーソナルトレーニング「Aジム」のターゲット候補とは?
ここからは便宜上、架空のパーソナルトレーニング「Aジム」を設定して、ターゲットカスタマーの候補をどのように洗い出すかを説明したいと思います。
Aジムの基本情報
- 住所:東京都渋谷区(駅近)
- 規模:小
- トレーナー:2名(男1名、女1名)
- コース:ダイエット、ボディメイク
- サポートプログラム:食事指導 ※コースに含む
- コース期間:2ヶ月、3ヶ月
- 入会金:2万円
- 価格:2ヶ月8回(1回40分)12万円~
- 支払い:銀行振込、クレジットカード、分割あり(月2万円~)
- 設備:ウォーターサーバー、水素水、更衣室・シャワー、アメニティ
- その他:個室、完全予約制、ウェア貸出、無料カウンセリング(トレーニング体験込)
ターゲットカスタマーの候補を探すときに最も簡単で効果的な方法は、既にお客様として来ているジム会員の情報を参考にすることです。既存顧客と同じような属性やニーズ、志向を持っているカスタマーは、自社のサービスに興味を持ち、サービスの内容に満足してくれる可能性が高いと言えます。
これからサービスを立ち上げるという人は、参考にしたいジムのホームページをチェックして、そこに掲載されているお客様の声やプログラムの内容からターゲット候補を想定することも可能です。
では仮に、Aジムの顧客カルテやスタッフへの聞き取りから以下のことが明らかになったとして、こちらを元にAジムのターゲット候補を考えてみます。
Aジムの会員情報
- 基本情報
- 性別:女性8割、男性2割
- 年齢:20代半ば~30代がメイン
- 職業:会社員がほとんど
- アクセス:ジムまで30分圏内に在住または通勤
- 費用:2ヶ月8回12万円(最安プラン)が多い
- 目的:ダイエット7割、ボディメイク2割、ほか1割
- ジム通いの背景やニーズ
- ジムのやわらかい雰囲気を気に入っている人が多い
- 自己流のダイエットやトレーニングで効果を実感できなかった人が多い
- 女性は体型を気にする人が、男性は筋肉のつき方や体脂肪の増加を気にする人が多い
- 20代女性は理想の体型に近づきたいという魅力アップニーズが多い
- 30代女性は肌や体力の衰え、体重の落ちにくさ等がきっかけになった悩み解消ニーズが多い
ターゲットカスタマーの候補を洗い出す3つのステップ
1. 同質のニーズを持った顧客グループをつくる
まずは会員の共通点に注目し、同じようなニーズをもった会員を、年代や性別などの基準でグルーピングします。ジムに来ている人は大体こういうタイプに分かれるというふうに、ある程度の同質性をもったグループをつくりましょう。
2. 顧客グループの中からターゲット候補を選ぶ
次に、ターゲット候補として有望なグループだけを残します。市場規模や将来性、顧客シェアや顧客単価、リピート率の高さなどに注目し、売上や利益に対するインパクトの大きい顧客グループをターゲット候補とします。
ここまでのステップで、Aジムの場合は次の3タイプの顧客グループをターゲット候補として想定することが可能です。
- 顧客グループ1:20代後半の女性。理想の体型をつくりたい
- 顧客グループ2:30代の女性。体型の悩みを解消したい
- 顧客グループ3:30代の男性。格好いい筋肉をつけたい
顧客グループ3は男性なのでAジム全体に占める割合は小さいですが、顧客単価やリピート率が比較的高いという理由でターゲット候補に残しています。現状ではあまり多くの顧客を獲得できていませんが、Aジムにとって今後ぜひとも狙いたい顧客グループと言えます。
ちなみにステップ1に関しては、年代や性別以外にもグルーピングの基準は考えられます。
モデル向けのシェイプアップコースを用意しているジムであれば、職業という基準でグループ分けできるかもしれませんし、30代の女性をさらに細かく分けて「部分痩せ」「全体痩せ」というふうに分類できる可能性もあります。
どのような観点や切り口でグルーピングすれば同質のニーズをもった顧客群にまとめられるか、そしてターゲット候補として魅力的なグループをつくれるかを考えるのがポイントです。
3. 顧客グループごとに顧客像(ペルソナ)を構築する
最後のステップは、ペルソナと呼ばれる顧客像の作成です。洗い出した顧客グループを代表するような人物像を構築し、そのニーズや志向などをより正確に把握します。
これは「20代後半の女性。理想の体型をつくりたい」といった年代や性別、大まかなニーズの把握だけでは、カスタマーの人物像が見えず、その気持ちに共感することができないためです。
ペルソナを構築することでカスタマー視点に立つことができるようになるので、この後に控えている競合を洗い出す作業やターゲットカスタマーを決める作業の質も高まります。
ではAジムの顧客グループ1を例に、実際にペルソナをつくってみます。
Aジムの顧客像(ペルソナ):20代後半の女性
顧客グループ1:20代後半の女性。理想の体型をつくりたい
顧客像(ペルソナ)
- 基本情報
- 名前:ラン
- 性別:女性
- 年齢:27歳
- 年収:400万円
- 居住地:東京都渋谷区
- 世帯:独身、実家暮らし
- アクセス:家からジムまで15分
- 想定イメージ
- 自分の見た目に自信がなく、体型を気にしている。あと3~4キロは痩せたい。これまで色んなダイエットに挑戦しては挫折してきた。お酒を飲むのが好きで付き合いが広く、食生活が乱れているのも気になっている。運動をする機会がないため疲れやすく、オフィスワークなので肩こりもひどい。
- 30代を前に一念発起してパーソナルトレーニングジム通いを検討中。食事指導も利用したい。体重を落とすだけでなく、見た目の変化も求めていて、これを最後のダイエットにして自分に自信をつけたいと思っている。
- トレーニングのことはよく分からないのでメニューは全て任せたい。通いやすい雰囲気、親しみやすいトレーナーを希望。運動オンチではないが筋力トレーニングは好きではない。挫折しないように励ましてほしい。
ペルソナは、普段から見聞きしていることやスタッフや会員への聞き取り、アンケートなどを参考につくります。
実在しない架空の人物を設定するので想像力を働かせることが大事ですが、想像だけを頼りにすると実際とはかけ離れた顧客モデルができあがってしまうので注意してください。
顧客グループを代表する人物像をより正確に表せるほど、マーケティング戦略の精度が高くなります。
※実際にはこのあと、顧客グループ2と顧客グループ3についても同様にペルソナを作成する必要がありますが、説明するとくどくなってしまうので割愛します。
2. 競合するパーソナルトレーニングジムを特定・分析する
ターゲット候補すべてのペルソナをつくったら、次は競合するパーソナルトレーニングジムの特定と分析に入ります。
普段はあまり意識することがないかもしれませんが、どんなパーソナルトレーニングジムにも競い合っているジムが必ずあります。
カスタマーはどのジムが自分に合っているかを比較し、気になったところにだけ問い合わせをしています。そのため、競合ジムのことを理解したうえで差別化できる点を上手くアピールしないと、すぐに選択肢から外されてしまい、カスタマーと接点をもつことすらできません。
【事例】パーソナルトレーニング「Aジム」の競合とは?
競合するジムを探すときは、ターゲットカスタマーの視点から業界を見渡し、自社と比較されることになるジムはどのような特徴をもっているだろうかと考えていきます。
Aジムでは、ターゲットカスタマーの候補を以下の3グループに設定しました。ここでは各顧客グループを代表する顧客像(ペルソナ)も全て作成してあると仮定します。
- 顧客グループ1:20代後半の女性。理想の体型をつくりたい
- 顧客グループ2:30代の女性。体型の悩みを解消したい
- 顧客グループ3:30代の男性。格好いい筋肉をつけたい
これらの情報をもとに、Aジムと競合するジムを探してみます。
競合するパーソナルトレーニングジムを特定する3つのステップ
1. ターゲット候補のペルソナを確認し、検索行動について考える
まず最初にターゲット候補の中から優先順位の高いものを1つ選び、ペルソナを確認します。そしてその人がパーソナルトレーニングジムを探すときはどのように検索するだろうかと想像力を働かせます。
例えば、顧客グループ1(20代後半の女性。理想の体型をつくりたい層)の場合、代表的な顧客像であるランさんの気持ちになって考えると、まずは家から近くて通いやすいジムを探すのではないかと想像できます。
具体的には、インターネットで「渋谷区 パーソナルトレーニングジム」などと検索して表示されたWebサイトを上から順番にチェックし、ダイエットやボディメイクのプログラムはあるか、食事指導を行っているか、料金はどれぐらいかといった情報を確認していくのではないでしょうか。
2. 競合するパーソナルトレーニングジムに共通する要素を洗い出す
ターゲット候補の検索行動について具体的なイメージが湧いてきたら、自社ジムと比較される可能性が高い競合ジムについて、その特徴や提供サービスの内容を考えます。
ここではランさんの立場になって、パーソナルトレーニングジムに求めたいことを洗い出していきます。このとき、パーソナルトレーニングジム業界の6つの競争要因について、ひとつずつ具体的に考えることが重要です。
パーソナルトレーニングジムの選定条件(顧客グループ1:ランさんの場合)
- 個別性の高いトレーニング:ボディメイクで綺麗な見た目になりたい。筋トレが好きじゃなくても前向きに取り組めるメニューがいい。
- サポートプログラム:食事指導を希望。終了後も健康的な食生活を維持したい。
- トレーニング環境や設備:親しみやすいやわらかい雰囲気がいい。本格的すぎるジムは敷居が高い。
- 質の高い顧客対応:女性トレーナーを希望。挫折しないように適度な距離感で丁寧にサポートしてほしい。
- 通いやすさ:家から近いところ。渋谷区または近隣の区で検討。仕事帰りに寄れるといい。
- 価格:予算は月3万円ほど、頻度は週に1回を希望。分割払いを検討。
3. 競合するパーソナルトレーニングジムを特定する
パーソナルトレーニングジムの選定条件を明確にしたら、条件に当てはまるジムを探します。インターネットをつかって渋谷区やその周辺エリアにあるジムを検索するのがいいでしょう。
Aジムと競合関係にあるパーソナルトレーニングジムの分析
ここからは、競合リサーチの結果、Aジムと競合関係にあるBジムとCジムが渋谷区に見つかったと仮定して、具体的な競合分析の仕方を解説していきます。
まずは特定した競合するジムの基本情報を箇条書きにします。ホームページを確認して、プログラムやコース、料金などをメモしていきましょう。
競合ジム1:パーソナルトレーニングBジム(女性専用)
Bジム(女性専用)の基本情報
- 住所:東京都渋谷区
- 規模:中
- トレーナー:4名(女性のみ)
- コース:ボディメイク(ダイエット込)
- サポートプログラム:食事指導(管理栄養士)、宅配食 ※コースに含む
- コース期間:2ヶ月、3ヶ月
- 入会金:3万円
- 価格:2ヶ月16回(1回60分)21万円~ ※30日間返金保証あり
- 支払い:銀行振込、クレジットカード ※分割あり(月9,000円~)
- 設備:ウォーターサーバー、更衣室・シャワー、パウダールーム、アメニティ(女性向け)
- その他:個室、完全予約制、ウェア貸出、無料カウンセリング、お試し体験5,500円
競合ジム2:パーソナルトレーニングCジム
Cジムの基本情報
- 住所:東京都渋谷区
- 規模:大
- トレーナー:7名(男3名、女4名)
- エステティシャン:5名(女性のみ)
- コース:ダイエット(身体データ測定付)
- サポートプログラム:食事指導(管理栄養士)、痩身エステ ※どちらもコースに含まれない(別料金)
- コース期間:2ヶ月、3ヶ月
- 入会金:4万円
- 価格:2ヶ月16回(1回60分)22万円~
- 支払い:銀行振込、クレジットカード ※分割あり(月9,000円~)
- 設備:ウォーターサーバー、水素水、プロテイン、更衣室・シャワー(男女別)、パウダールーム、アメニティ
- その他:個室、完全予約制、ウェア貸出、無料カウンセリング、1週間お試しコース 2万円
競合比較表を作成して各ジムの特徴やサービス内容について分析する
次に、集めた情報を整理して競合比較表をつくります。あとで違いを比較しやすいように、共通する部分を並べたり書き方を統一したりするなどして工夫しましょう。
競合比較表ができたら、BジムとCジムの特徴やサービス内容について分析します。パーソナルトレーニングジムを絞り込むつもりで3つのジムを比較し、気づいた点や競合ジムについての仮説をまとめていきましょう。
このときのポイントは2つあります。ターゲットカスタマーの候補(ランさん)の視点に立つことと、パーソナルトレーニングジム業界の6つの競争要因それぞれについて、Aジムとの違いに注目していくことです。
※ここでは比較表だけを見て分析を進めていますが、実際にはホームページを確認しながら、ジムの雰囲気や会員の声、トレーナーのプロフィールなど比較表に載っていない要素にも注目します。
パーソナルトレーニングAジムとその競合について(まとめ)
- Aジム
- 食事指導もコース料金に含まれており、シャワーやウェアの貸し出しもあるため、忙しくても仕事帰りにトレーニングできる。
- 駅から近くて通いやすいうえにBジムやCジムよりも入会金やコース料金が安く、無料カウンセリングに体験トレーニングが付いている。必要なものは揃っている印象。
- Bジム
- 特徴は女性専用であること。トレーナーは全員女性で悩みや希望を打ち明けやすく、ボディメイクのメニューにはヒップアップや脚痩せといった女性ならではのニーズに応える内容が並ぶ。
- 管理栄養士に食べながら美しく健康的に痩せられる方法を相談でき、栄養バランスにこだわった宅配食を毎日届けてもらうことも可能。
- コース料金は21万円~とAジムより10万円ほど高いが、トレーニング回数が多く、1回のトレーニング時間も長い。30日間の返金保証や月9,000円~分割払いを利用できるところも魅力。
- Cジム
- Aジム、Bジムに比べて入会金もコース料金も高い。食事指導を追加すると更に料金が上がり、返金保証もないので、費用・リスク負担がこの中では一番大きい。月9,000円~分割払いができる点、コースと同じメニューを1週間試せるプランが2万円で用意されている点は魅力。
- ジムの規模が大きいため広々とした開放的なトレーニング空間になっている。女性トレーナーが多く在籍しており、更衣室やシャワールーム、パウダールームなどはすべて男女別になっている。水素水、プロテインを無料で提供してくれるのは有難い。
- 特殊な機器をつかった身体データ測定をつかって、姿勢や体脂肪、体型などを細かくチェックしてくれる。効果を実感しながら理想とする体重や体型を着実に目指せる。
- コース料金が高くなるが、女性エステティシャンによる痩身エステも利用できる。
Aジムの差別化の方向性をまとめる
最後に、Aジムの差別化の方向性についてのアイディアをまとめます。具体的には、競合ジムと比較した場合の強みや弱みを数え上げ、どうすればターゲットカスタマーに選んでもらえるかを考えます。
Aジムの差別化の方向性
- 強み:駅からのアクセスの良さとリーズナブルなコース(食事指導付き)があること。
- 弱み:管理栄養士によるアドバイスや宅配食、身体データ測定、痩身エステなどの付加価値を発揮するプログラムやサービスがないこと。
- 訴求の仕方:「通いやすくリーズナブルな価格ながら、結果を出すために必要なものが全て揃っている」という方向性が良いのではないか(以下、アイディア)。
- ダイエットやボディメイクの実績をアピールし、丁寧なカウンセリングや個別性の高いメニューの考案、一人一人の違いに寄り添ってトレーニングをサポートできるというメッセージなどを伝える。
- アットホームな雰囲気をジムの内観写真やお客様の声をつかって伝え、体験トレーニング付きの無料カウンセリングやお問い合わせに誘導する。
- こだわりのトレーニング設備やトレーナーのプロフィール、ジムのコンセプトやメソッドなども紹介し、良心的でお客様ひとりひとりの目標達成にこだわっている信頼できるジムという訴求を行う。
競合するパーソナルトレーニングジムの特定・分析はこれで終了です。他のターゲット候補(Aジムでいう顧客グループ2と3)についても同様に競合ジムの特定・分析を実施します。※この記事では割愛します
競合ジムに対して強みがない、または思いつかないという場合は、この差別化の方向性を考える作業を飛ばしても構いません。競合に勝つことが難しい市場なのであれば、次のステップでターゲットから外すことになります。
3. ターゲットカスタマーを決めてマーケティング戦略をつくる
ここまでの作業を簡単に振り返ると、初めにターゲットカスタマーの候補を洗い出して代表する顧客像(ペルソナ)をつくり、そのあとターゲット候補別に競合するジムを特定・分析しました。
いま手元には、ターゲットカスタマー候補ごとの競合比較表と差別化のアイディアがある状態です。
最後のステップでは、ターゲットカスタマーを決定してマーケティング戦略をつくります。
【事例】パーソナルトレーニング「Aジム」のターゲットを決定する
Aジムでは3つのターゲットカスタマー候補を想定して分析を進めてきました。
- 顧客グループ1:20代後半の女性。理想の体型をつくりたい
- 顧客グループ2:30代の女性。体型の悩みを解消したい
- 顧客グループ3:30代の男性。格好いい筋肉をつけたい
この中からターゲットにふさわしい顧客グループを特定します。
ターゲットカスタマー候補を分析・評価する3つの観点
ターゲットを決定するときは、自社にとって旨味のある市場はどこにあるかという観点でそれぞれのターゲット候補を眺め、勝てるフィールドを探します。
具体的には以下の3つの観点を用いてターゲット候補を評価し、標的にする市場を探します。
- 市場:市場の規模や成長性は魅力的か
- 自社:自社の強みや特長を生かせるか
- 競合:競争優位や差別化を実現できるか
このとき全ての評価をまとめた表をつくると作業がはかどります。これまでに作成したターゲット候補のペルソナや競合比較表、差別化の方向性などを参考にしながら、ひとつずつ評価を記入していきましょう。
ターゲット候補の評価が終わったら、表を見ながらターゲットカスタマーを決定します。
ターゲットカスタマーは1つに絞っても複数選んでも構いません。効果的な訴求ができるかどうかという観点で、どこまでをターゲットにするかを検討しましょう。
パーソナルトレーニングジムのターゲットを決定する方法
Aジムの場合、ターゲットの設定には3つのアプローチが考えられると思います。
1つ目は、顧客グループ1もしくは顧客グループ2をターゲットに設定するというやり方。どちらも競合に対して差別化を実現できる市場であるため、ランディングページをつかった効果的な集客が期待できます。
2つ目は、顧客グループ1と2の両方をターゲットに設定するやり方。どちらも女性であるため、ランディングページ内のコンテンツを女性ウケしそうなコンテンツに統一することで、一挙両得な集客が可能になるかもしれません。
3つ目は、上記の考え方で顧客グループ1と2をメインターゲットにし、顧客グループ3をサブターゲットに設定するというやり方。顧客グループ3は男性なので、全体のテイストやデザインは男女どちらにも受け入れてもらえるようにし、掲載するコンテンツの量を女性向けを多め、男性向けを少なめといった形で調整します。
Aジムにとって顧客グループ3は無視できない見込客であり、顧客単価やリピート率が高いため、少ない人数でも何とかして取り込みたい対象です。そのため、このようにコンテンツを工夫してターゲットに設定することには価値があります。
ただし、一般的に属性が大きく異なる複数のターゲットを設定すると、ランディングページに盛り込む情報やデザインに統一感を持たせるのが難しくなることに注意が必要です。
例えば3つ目のアプローチだと、男性向けと女性向けのコンテンツを掲載しなければならなくなり、ターゲットを女性だけに絞った場合に比べて、デザインのテイストや写真、訴求内容に一貫性を持たせるのに苦労します。
そこで検討を進めていく中であまり効果が見込めそうにないと判断した場合は、顧客グループ3のような属性が異なるターゲットについては別のランディングページを用意することにし、今回は女性向けに特化するという判断でもいいかもしれません。
もしくは思い切ってターゲットから外してもいいと思います。顧客グループ3は市場の魅力が乏しく競合との差別化も難しいため、中途半端にターゲットに設定しても、あまり効果を出せない可能性があります。
ターゲットの設定は、ジムの方針や要望なども関わってくるため機械的に行うことはできません。
じっくり時間をかけて検討し、必要であれば追加の情報収集や社内ミーティングを実施するなどして決定しましょう。
【事例】パーソナルトレーニング「Aジム」のマーケティング戦略をつくる
ターゲットカスタマーが決まったら、最後にマーケティング戦略をつくります。マーケティング戦略をつくるというと大そうなことに思えるかもしれませんが、やることはそこまで難しくありません。
これまでのステップで必要な作業や分析は終わっているので、あとは情報を整理してマーケティング戦略としてまとめるだけです。
具体的には、以下の3つの観点で情報を整理してマーケティング戦略をつくります。
- 誰に:ターゲットカスタマー
- 何を:自社の強みや特長
- どのように:差別化の方向性
パーソナルトレーニングジムのマーケティング戦略をつくる方法
Aジムのこれまでの分析を振り返ると、ターゲットを顧客グループ1のみとした場合、競合するジムはBジムとCジムの2つになることが分かっています。これらのジムと差別化する方法についても、競合比較表を用いた分析のところである程度当たりをつけることができました。
そこでまずは、ここまでで得た情報を「誰に」「何を」「どのように」という3つの観点で整理します。
Aジムのマーケティング戦略
- 誰に:ターゲットカスタマー
- 顧客グループ1「20代後半の女性。理想の体型をつくりたい」
- ペルソナ:ランさん(27歳女性、東京都渋谷区在住、実家暮らし…※以下省略)
- 何を:自社の強みや特長
- 駅からのアクセスの良さ
- リーズナブルなコース(食事指導付き)
- どのように:差別化の方向性
- 「通いやすくリーズナブルな価格ながら、結果を出すために必要なものが全て揃っている。良心的でお客様ひとりひとりの目標達成にこだわっている信頼できるジムである」という打ち出し方
- ダイエットやボディメイクの実績をアピール
- 丁寧なカウンセリングや個別性の高いメニューの考案
- 一人一人の違いに寄り添ってトレーニングをサポート
- アットホームな雰囲気(ジムの内観写真やお客様の声で伝える)
- 体験トレーニング付きの無料カウンセリングやお問い合わせに誘導
- こだわりのトレーニング設備やトレーナーのプロフィール、ジムのコンセプトやメソッドなども紹介
※上記の例では、顧客グループ1のみをターゲットとしているので、競合分析パートの最後にまとめた差別化の方向性を基本的にはそのままマーケティング戦略として採用していますが、ターゲットを複数設定する場合は、それぞれの競合分析パートでまとめた差別化の方向性や競合比較表を並べ、内容を統合したり取捨選択したりしながらマーケティング戦略としてまとめあげる作業が必要になります。
次に、競争優位性を高めるアイディアやターゲットカスタマーの価値につながる情報を肉付けしていきます。
特に大事なのが、自社の弱みを補う内容や競合ジムの強みに対抗できる内容について検討すること。自社と競合の違いを詳細に分析・比較して、ターゲットに選んでもらえるように追加でアピールできる情報はないかを考えます。
自社の弱みを補い競合の強みに対抗するアイディア
- 管理栄養士ではないが、食事のアドバイスが具体的であることや、カロリー計算や栄養学を参考に無理のないアドバイスをしていることを訴求してはどうか
- 身体データを緻密に測定できる機器はないが、トレーニングメニュー考案時はもちろんのこと、トレーニング中やトレーニング後も定期的に体重や体脂肪率を測り、きちんと成果を出せるように導くことを盛り込んではどうか
- 痩身エステなどのサービスはないが、トレーニングメニューの特徴や効果を具体的に語ることで、内面からも外面からも美しくなれるということをうたってはどうか
最後にこれらのアイディアも盛り込み、全体を整えたらマーケティング戦略の完成です。
まとめ:パーソナルトレーニングジムのランディングページを効果的に作るために
これでランディングページを通して「誰に」「何を」「どのように」伝えるかが決まり、ランディングページの構成案やコンテンツをつくっていく準備が整いました。
マーケティング戦略の設計が終わったら、次はいよいよランディングページの制作に入ります。
この連載では第一回、第二回と続けて、効果の出るランディングページをつくるための市場分析やマーケティング戦略の立案について説明してきました。検討・分析しなければならないことが多くて大変に思えるかもしれませんが、それだけこの分析のステップが重要だということを、ここであらためて強調しておきたいと思います。
間違った方向を向いていては、いつまで経っても目標や目的地に到達できませんし、せっかく費やした手間や時間、努力もすべて無駄になってしまいます。
逆に、業界の状況を理解したうえで、競合と差別化を図りながらターゲットカスタマーに価値を訴求できるフィールドが見えているなら、あとはランディングページでそれを表現するだけなので、やるべきことはシンプルです。
見定めた方向だけを向いて、迷うことなく最短距離で、効果の出るランディングページをつくることができるはずです。
第三回の記事では、マーケティング戦略をランディングページに落とし込む方法について解説したいと思います。